1.「自治体における集団補聴援助システムの導入」とは
まず「自治体における集団補聴援助システムの導入」という件名で事例を調べると、下の表のように大きく分けて二つあります。
表中で説明をしている通り、この二つは全く異なる事例となります。
当サイトでは「2- 2」を扱っていきますが、ネット上に上がっている事例はまだ少ないのが現状です。
当サイトで再三申し上げている通り、インターネットは「知りたいワード」で検索をすれば「知りたい情報」をたくさん得ることはできます。
もちろん、それぞれの記事や情報は信頼に足るものではありますが、そこには新旧の情報が混在していることが多くあります。
当サイトで扱っているような「情報保障機器」は技術革新により、3年も経てばその内容は大きく変わってきます。
また市場の動向も「障害者差別解消法」の施行、浸透、改正法の交付と状況は目まぐるしく変わっています。
また「集団補聴援助システム」という用語に関しても、いろいろな機器の総称であり、
下の表のように、それぞれの目的や用途は全く異なります。
当サイトでは、皆さまのニーズを満たすための情報をしっかり伝えていきたいと思っています。
1.ヒアリングループシステム |
公共施設(ホール、スタジアム、福祉施設、老人ホーム、図書館、 各種会議室、研修室、役所の窓口など)にシステムを設置し、 訪れる難聴者の聞こえを改善するもの。
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2000年以降、 導入が進んだ |
2-1.FM補聴援助システム 赤外線補聴援助システム |
教育現場(小中学校・聴覚支援学校)でシステムを導入し、 そこで学ぶ難聴児の聞こえを改善するもの。 FM補聴援助システムは、後継機ロジャーのリリースにより、 現在は販売されていない。
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2006年以降、 導入が進んだ |
2-2.デジタル補聴援助システム (ロジャー) |
FM補聴援助システムの後継機で、聞こえの精度がさらに進化。 障害者差別解消法で提唱された「合理的配慮」の浸透で 大学の障がい学生支援室や、障がい者雇用を進める企業での 導入も進んだ。
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2013年以降、 導入が進んだ |
2.自治体の教育現場における補聴援助システム導入の現状分析
まず、厚生労働省が2020年3月に発表した報告書「集団補聴システムの普及実態に 関する調査研究」を紹介させていただきます。
調査対象4,391ヶ所に対して有効回答数2,682ヶ所(有効回答率61.1%)という高い回答率を得ている、全106ページにも及ぶ素晴らしい調査です。
参考:集団補聴システムの普及実態に 関する調査研究(厚生省)
下の表は、その調査から抜粋したものです。
導入している集団補聴システムの種別
(2020年3月 厚生省調査から抜粋)
合計 | 府省庁 | 都道府県 | 市区町村 | 文化施設 |
聴覚特別 支援学校 |
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有効回答件数 | 2 | 27 | 269 | 213 | 73 | ||
ヒアリングループシステム | 敷設型 | 305 | 1 | 18 | 139 | 104 | 43 |
携帯型 | 210 | 1 | 20 | 159 | 28 | 2 | |
FM補聴援助システム 赤外線補聴援助システム |
敷設型 | 102 | 5 | 30 | 44 | 23 | |
携帯型 | 92 | 6 | 21 | 37 | 28 | ||
デジタル補聴援助システム (ロジャー) |
敷設型 | 4 | 4 | ||||
携帯型 | 55 | 3 | 9 | 2 | 41 |
補聴援助システム(ロジャー)が、聴覚特別支援学校での導入(FMからの入替え含む)が多いのは当然として、 市区町村では、ほとんど導入(FMからの入替え)が進んでいない、ということです。 特別支援学校ではなく通常学級で学ぶ難聴児が増えているにも関わらず、現場の環境が追いついていない。 |
ただ、ここでこの調査を少し深読みすると、 市区町村の回答者が、教育委員会の状況まで掌握のうえで回答されたのかは多少疑問がある思います。 つまり教育委員会での導入事例が、拾い切れていない可能性もあるということです。 |
教育現場の公立小中学校の設備などの設置、運営を担当している「市区町村の教育委員会」において 一般学級で学ぶ難聴児の聞こえの改善の為に「補聴援助システム」を導入するのは、まだまだレアケースである。
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3.なぜ教育委員会でロジャーの導入が進まないのか
さらに、厚生労働省の調査研究を読み進むと、回答者が「導入を考えていない理由」として主に次の3点が挙がっています。
それぞれに関して私の見解と、当サイト内参考記事を記します。
1.必要性を感じない 現状で問題が生じていない |
公共施設へのヒアリングループシステムの設置、と混同していると思われます。 親御さんから「子供が通っている小学校でロジャーを導入してくれない」 というお声は、当サイトにも多数届いております。 既に何年も前から「学校現場でロジャーの導入が進まない」 「個人購入したくても、FMはOKだがロジャーは助成が下りない」問題が 発生しているという認識です。 参考:全国の市町村で「FMの助成はOKで、ロジャーの助成はNG」の矛盾は
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2.予算がない |
実際、親御さんから現場への要望が出るのが、期中だったりすると 予算がやりくりできないという事でしょうか。 ロジャーは送信機1台でしたら15万円以下です。 比較的安価で購入できますし、設置工事も不要です。 また全国1741市区町村の内、約2割の自治体では、ロジャーの助成が可能です。 参考:全国1741市区町村の補聴援助システム / ロジャー助成金制度について
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3.情報が不足している 使い方が分からない |
これは完全に私ども業者サイドの怠慢によるものです。 また上記2件に関しても、私どもの情報発信不足が原因と考えております。 本当に申し訳ございません。 当サイトでは情報発信の厚みとスピードを増していきます。 各エリアの販売店との連携も進めていきます。
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4.好事例のご紹介
2件、好事例をご紹介致します。
このような事例が、全国に広まると良いですね。

徳島県
2016年に日本小児耳鼻咽喉科学会にて、千田 いづみ先生(当時徳島赤十字病院耳鼻咽喉科 / 現徳島市民病院耳鼻咽喉科)が発表した論文です。
徳島県では、早くから県内の難聴児に対する手厚い助成を行っており、医療側から行政に働きかけた結果、平成20年度(2008年度)から補聴援助システムを教育委員会が購入し,貸与するようになった。
さらに平成26年度(2014年度)から軽・中等度難聴の補聴器助成が開始され、補聴器は公的支給、補聴援助システムの送信機は教育委員会が購入、受信機は公的支給されるようになった。
その結果、徳島県では補聴援助システムを希望し、申請した両側難聴児の全員に助成されており、補聴援助システムの普及は全国第 1 位である、と説明がある。
参考:難聴児に対する補聴援助システムの有用性(J-STAGEサイト)

佐賀県鳥栖市
聴覚障がいのある児童が教師の言葉を十分に聴き取れるよう、佐賀県の鳥栖市立麓小学校で令和2年(2020年)4月から、補聴援助システムを取り入れた授業を実施しています。
その前年、人工内耳を持つ難聴のお子さまを持つお母さまから「補聴援助システムを使って、地元の普通学級の授業を受けさせたい」との相談を受けた、公明党の飛松妙子市議は早速、市の教育委員会に要望。その後も、粘り強く進展状況を確認するなど、導入に結び付けてきた、との事です。
なおこの記事内の写真で、学校の先生が首から下げているのは
「ロジャー タッチスクリーンマイク」です。
参考:「普通学級へ」母の願い届く(公明党サイト)
上記記事は、2020年のものでしたが、
飛松市議に、最新の情報を伺ったところ、
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この記事の後に、もう一人、旭小学校でも導入され、
今年度は、中学校でも導入。計3人となりました。
当初は、他の自治体を視察し、学校の備品として配備したいと思っておりましたが、 保護者の方から、ご自宅でも使用したいとのご意見もありました。(学校備品にすると、持ち帰りができないため)
さらに、佐賀県の購入費助成事業が拡充され、新たに対象者や対象品目が追加されましたので、鳥栖市の要綱を改定し、今まで対象に含まれていなかった軽度・中度難聴児も対象となりました。その結果、今年度、一人の方が、ロジャーの購入ができました!(人工内耳体外機の更新に助成を受けることもできるようになりました)
少しづつではありますが、助成の中身が拡充されています。
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との事です。素晴らしいですね。
5.お客さまの声
最後に、当サイトに寄せられた、お客さまの声を紹介します。
神奈川県にお住いの、小学生の難聴児を持つお父さまからです。

ありがとうございます。
「ヒアリングエイド・ボルテージ・ドットコム」では、皆さまの望みが叶うように、
これからも活動を続けてまいります。
こちらの記事も、併せてご覧ください
全国の難聴児の保護者の方からいただく中で一番多い「FM型補聴器 - デジタル補聴援助システム(ロジャー)問題」に関して、詳しく説明をしています。
(最後に重要な最新情報を追記)
2016年4月から施行されていた「障害者差別解消法」の改正法が2021年5月に公布されました。公立小中学校の現場におけるポイントを分かりやすく解説しています。
(内容修正)
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